
ファンダイビングの魚図鑑とは?
ファンダイビングは、ライセンスを取得したダイバーが、より自由に水中世界を楽しむダイビングスタイルです。せっかく潜るなら、ただ「きれいだった」で終わらせず、「どんな魚と出会えたか」までしっかり思い出に残したいですよね。そこで役立つのが、ファンダイビング用の魚図鑑です。水中で見た魚の名前や特徴をその場で調べられるだけでなく、あとからログブックを書くときにも大活躍します。
ファンダイビングと体験ダイビングの違い
体験ダイビングはインストラクターに完全に任せて水中世界を味わうイメージですが、ファンダイビングは「自分で楽しみ方を広げていく」段階に入ったダイバー向けです。潜れる水深やエリアの自由度も高くなり、水中での過ごし方にも選択肢が増えます。その中で魚図鑑は、「今日はどんな魚を探しに行こうかな」とダイビングプランを考えるヒントにもなり、より主体的に海を楽しむきっかけになります。
魚図鑑を持って潜るメリット
魚図鑑があると、似ている魚の違いをその場で確かめられるので、「ただの黄色い魚」だったものが「チョウチョウウオの仲間」「スズメダイの仲間」と具体的にわかるようになります。名前がわかると愛着がわき、次に出会ったときのうれしさも倍増します。また、ガイドさんが水中で板に名前を書いて教えてくれることもありますが、自分でも図鑑で確認しておくと、だんだんと種類を覚えられて、毎回のダイビングが学びの時間にもなります。
ファンダイビングで出会える代表的な魚たち
ファンダイビングでよく潜る沖縄や伊豆、和歌山などの海では、カラフルで個性的な魚たちがたくさん暮らしています。ここでは、初心者ダイバーでも出会いやすく、魚図鑑にも必ず登場する代表的な種類をいくつか紹介します。実際に図鑑を見るときも、「まずはこのあたりから覚えよう」という目安になるので、最初の一歩としてイメージしながら読んでみてください。
カクレクマノミやクマノミの仲間
映画でも有名になったカクレクマノミは、ファンダイビングの人気ナンバーワンといってもいい存在です。イソギンチャクの中にちょこんと隠れる姿がとてもかわいく、写真映えも抜群です。図鑑では、体の模様や色の違いから、「カクレクマノミ」「ハマクマノミ」「クマノミ」などの違いを見比べることができます。同じクマノミでも住んでいる水深やエリアが少し違うこともあるので、出会えた種類をメモしておくと、自分だけの観察記録になります。
チョウチョウウオやスズメダイの仲間
サンゴ礁の周りでひらひらと泳ぐチョウチョウウオの仲間は、体の模様がとてもバリエーション豊かです。一見似ているようでも、目の周りの線や体の帯の本数が少しずつ違い、図鑑を見ながら見比べると「間違い探し」のような感覚で楽しめます。スズメダイの仲間は群れで見られることが多く、水中の景色を一気に華やかにしてくれます。名前を覚えるのが難しいグループですが、「色」「模様」「群れ方」などのポイントを図鑑でチェックしながら少しずつ覚えていくと、サンゴの周りを見る目が変わってきます。
ハナダイやハタなど、ちょっと通な魚たち
もう少し魚に詳しくなりたい方は、ハナダイの仲間やハタの仲間にも注目してみましょう。ハナダイはオスとメスで色が違ったり、成長とともに模様が変わったりする種類も多く、図鑑を見ながら「これは婚姻色かな?」と想像するのも楽しい時間です。岩陰や根の周りにじっとしているハタの仲間は、落ち着いた色合いの種類も多いですが、体の模様や顔つきに個性があります。図鑑で生息環境や大きさもチェックしておくと、次に同じポイントを潜ったときに探しやすくなります。
ウミガメやマンタなどの大物との出会い
魚図鑑の中には、ウミガメやマンタ、サメなどの「大物」も掲載されています。これらは毎回必ず会えるわけではありませんが、出会えたときの感動は格別です。どの海域に多いのか、どんな季節や時間帯に見られやすいのかを事前に図鑑やガイドブックでチェックしておくと、ダイビングツアーを選ぶときの参考にもなります。出会えたときは、興奮しすぎて追いかけてしまわないよう、距離を保ちながら静かに観察することが大切です。
魚図鑑の選び方と活用のコツ
魚図鑑と一口にいっても、ポケットサイズの簡易図鑑から本格的な専門書、スマホアプリまでさまざまなタイプがあります。ファンダイビングを楽しむうえでは、「自分の潜る海域」と「自分のレベル」に合った図鑑を選ぶことがポイントです。ここでは、初心者ダイバーが失敗しにくい図鑑選びの考え方と、実際のダイビングで役立てるコツを紹介します。
初心者におすすめの魚図鑑のタイプ
最初の一冊には、写真が大きく、似た種類をまとめて紹介しているタイプの図鑑がおすすめです。細かい分類よりも、「見た目でパッと探せるかどうか」が大事なので、ページ構成がシンプルかどうかもチェックしてみてください。また、沖縄エリア専用、伊豆・相模湾エリア専用といった地域特化型の図鑑も、実際に自分が潜る海に合わせて選べるのでとても便利です。ページ数が多すぎると最初は使いこなせないこともあるので、まずは携帯しやすいボリュームから始めると続けやすくなります。
スマホアプリと紙の図鑑の使い分け
最近は、水中写真と名前を照合できる魚図鑑アプリも増えてきました。スマホアプリは検索性が高く、キーワードや色、模様などから候補を絞り込めるのが大きなメリットです。ただし、水中にスマホを持ち込むには防水ケースが必要で、操作もしにくくなります。そのため、海から上がったあとにゆっくり調べる用としてアプリを使い、水中でさっと確認したいときはラミネート加工された水中用の簡易図鑑を使う、という組み合わせがおすすめです。
ログブックと組み合わせて記録する
魚図鑑は、ログブックとセットで使うことで価値が一気に高まります。ダイビング後に図鑑を開き、「今日はどの魚を見たのか」「どの水深でよく見られたか」を思い出しながら書き込んでいくと、自分だけの観察データが蓄積されていきます。最初は「クマノミ」「チョウチョウウオ」などざっくりした記録でもかまいませんが、慣れてきたら種名や個体数、水温などもメモしておくと、後から同じポイントを潜ったときに比較できて、季節ごとの変化も感じられるようになります。
安全に魚観察を楽しむためのポイント
魚図鑑を片手に夢中で観察していると、つい周りが見えなくなってしまうことがあります。ファンダイビングでは安全第一が大前提ですので、魚観察に集中しながらも、安全面への意識は常に持っておきたいところです。ここでは、初心者ダイバーが意識しておきたい基本的なポイントを整理します。
魚との距離感とマナー
かわいい魚を見ると近づきたくなりますが、触ったり追い回したりするのはNGです。魚がストレスを感じると、本来の行動が見られなくなったり、同じポイントで見られなくなってしまうこともあります。観察するときは「魚が逃げない距離」を保ち、ゆっくりと近づくことを心がけましょう。また、サンゴや岩にフィンを当ててしまうと生き物を傷つけてしまうので、図鑑を見るときも体勢を安定させつつ、周りの環境に優しい中性浮力を意識することが大切です。
フィンワークと中性浮力を整える
魚観察をじっくり楽しむには、安定した中性浮力と静かなフィンワークが欠かせません。体がフラフラしていると、気づかないうちに魚との距離が近づきすぎたり、砂地を巻き上げてしまって視界が悪くなったりします。ファンダイビングの前半は、水中での姿勢や呼吸のリズムを意識しながら、自分の浮き沈みをコントロールする練習時間と考えるのもおすすめです。慣れてくると、少ない動きでふわっと移動できるようになり、魚を驚かせずに近くで観察できるようになります。
写真撮影のときの注意点
魚図鑑に載っているような写真を自分でも撮りたくなりますが、撮影に夢中になりすぎると安全確認がおろそかになりがちです。カメラの設定をいじるときは、必ずその場で体勢を安定させ、バディやガイドの位置を確認してから行うようにしましょう。また、フラッシュを至近距離で何度も焚くと魚に負担をかけることもあります。できるだけ自然光や控えめな光量で撮影し、短時間で切り上げることを意識すると、魚にも優しい写真撮影になります。
まとめ:自分だけのファンダイビング魚図鑑を作ろう
ファンダイビングで魚図鑑を活用すると、「なんとなくきれいな海」だった景色が、「一匹一匹に名前とストーリーのある世界」へと変わっていきます。最初は覚えることが多く感じるかもしれませんが、毎回のダイビングで少しずつ新しい魚を覚えていけば大丈夫です。自分の好きな種類やよく出会う魚がわかってくると、行きたいポイントや季節も自然と絞られてきて、ダイビング計画を立てる楽しみも増えていきます。魚図鑑とログブックを味方に、自分だけの「ファンダイビングの魚図鑑」を育てていきましょう。
